新しいマーチは「誰一人取り残さない」

国会を目指した以前のマーチへの違和感


アメリカで始まり、世界各地に広がっているマーチフォーライフ。産まれる前から子どもを守ろうと訴えるパッションに国境はありません。


世界じゅうでおこなわれているマーチの中で、日本のマーチは規模ではいちばん小さいものでしょう。50万人が集結するワシントンD.C.の大行進とは比べものにもなりません。でも日本のマーチは世界から注目されています。日本が、世界に広がるこの運動の一翼を担っていることに、歴史的かつ摂理的に大きな意味があると感じます。



世界につながる日本のマーチは、おそらく世界でいちばんインターナショナルなマーチです。行進の模様は実に国際色ゆたか。日本のマーチでありながら、日本人を上回る数の大勢の外国籍の参加者に支えられています。かつてこんな多国籍軍のデモ行進などなかったでしょう。これはこの3年間にあらわれた、誇るべき日本のマーチの特徴です。



しかし日本人以外の参加者の割合が増すにつれ、ある違和感も増しました。これまで日本のマーチは、日本橋、八重洲、銀座を通り、国会議事堂を目指して歩きました。東京でおこなわれるデモ行進の“王道”を行くものでした。終着地の日比谷公園の手前でかろうじて国会の屋根が視野に入るだけですが、このコースを歩く他の多くのデモ行進と同じく、国会にその意志を届けることを目的としていました。わたしたちのマーチにも、日本で事実上の合法的堕胎を可能にする母体保護法の改正を求めるデモ行進という名目がありました。はじめてデモの申請をする際に警視庁にそう届け出ていたのです。しかし外国人が日本の法律に対して異議申し立てのデモをおこなっているのだとしたら、今日の国際社会において道義的に問題がないとは言えないでしょう。厳しい見方をされれば、内政干渉のそしりを免れないでしょう。


さらに日本人にとっても母体保護法を標的にするデモはあまり意味をなさなかったかもしれません。連邦最高裁判所に向かって歩くワシントンD.C.のマーチは、端的に堕胎を合法とした最高裁判決の差し戻しを求めた政治行動です。それはXデーを見据えた現実の歩みです。現在、現役の最高裁判事の半数が差し戻しを支持すると目され、ワシントンD.C.のマーチが念願の本来のゴールに達する日を迎える可能性は十分あり得るでしょう。一方、東京のマーチは母体保護法を成立させた国会に向かって歩きますが、いまのところその法改正を政治課題とする現役の国会議員は一人もいません。




いのちは授かりもの


あらためて考えるに、母体保護法の改正を目標に掲げても、それはあまり現実的ではないし、また得策でもありません。最高裁判決の差し戻しというほどの白黒を反転させるようなインパクトはないからです。そもそも日本は、事実として今も多くの堕胎がおこなわれているものの、法律上は堕胎罪を存置する国です。堕胎をした者、させた者は刑法で罰せられることになっています。戦後、中絶による人口統制を目的に導入されたのが優生保護法(現 母体保護法)ですが、堕胎罪が廃止されたわけではありません。もちろんその新法によって日本は”堕胎天国”と化したわけですが、あくまでも堕胎罪の例外規定として成立したものでした。中絶手術が認められる場合を特定の医師に対して定めた法律です。堕胎を選択する個人の権利を認めているわけではありません。その選択を決定する主体は医師であり、個人の意志で堕胎を選ぶことができるわけではありません。


法という建前のうえでは、日本は堕胎に容易にアクセスできない世界でも稀なプロライフの国であり、プロチョイスからすれば個人の権利を著しく制限する不自由極まりない国です。中絶手術は保険適用外であり、現在のアメリカのようにそこに国費が使われることもありません。また、最近の日本は国として養子縁組をより利用しやすくするための法整備を怠っているわけでもありません。(中絶による人口統制策の悲惨な結果でありますが、)ついに未曾有の人口減社会に突入し、できるだけ中絶件数は減らしたいと考える昨今の行政の本音が透けてみえるでしょう。


公僕でなくとも、できることなら中絶はないほうがいいと考えるのは大方の日本人の共通認識ではないでしょうか。“Abortion on demand & without apology”(堕胎はお望みどおりに気兼ねなく)と主張するクールなプロチョイスは日本人の肌感覚として受け入れられないでしょう。「いのちは授かりもの」という価値観を否定する者が国会に入ることを国民は許さないでしょう。




思うに、わたしたちが多くの外国の人たちとともに向かう先は、国会ではなかったかもしれません。法の運用の仕方に問題があるのなら、実際に中絶手術をおこなう母体保護法指定医を管理する産婦人科医会をターゲットにすることもできたかもしれません。とはいえ特定の日本のセクターに対して外国人がデモを起こすという図はさらに違和感をともなうものでしょう。


世界に向かう日本のマーチ


2020年、わたしたちは向かう方向を転換します。日本のマーチですが、これから向かう先は、世界です。世界の友たちとともに世界に向かいます。向かう先は世界、すなわち平和的に世界を統治する世界最大の機関、国連です。

国会から国連へ。


国連は世界のすべての人と関係します。世界の誰でも、世界の何処にいても、国連に向かってアピールすることは可能です。


いまほど国連のもとに世界の多くの人たちが立ち上がって行動を起こそうとした時代はなかったでしょう。大人から子どもまで、開発途上国から先進国まで、様々な階層に属する世界の市民が共通の目標をもって、2030年という具体的な達成期限に向かって国連と歩みをともにするところとなったのです。持続可能な開発目標、SDGsの登場です。「貧困をなくそう」から始まる計17の分かりやすいスローガンとアイコンは、あらゆるメディアを通じて街でも職場でも学校でも頻繁に目に触れられるようになりました。




誰一人取り残さない〜leave no one behind


「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、17のSDGsのモットーが明確なことばで記されているのをご存知でしょうか。「誰一人取り残さない〜leave no one behind」というものです。現代世界に向けた宣言としては、なんと崇高なことばでしょう。国連設立時に世界人権宣言の第三章にうたわれた「生命の権利〜right to life」が今も国連の中心的な理念であることが強力に示されたと考えていいでしょう。よくぞそこまで言ってくれた!と賞賛する向きもあれば、そこまで言ってしまっていいのか?と戸惑う向きもあるでしょう。

誰一人取り残さない。羊は一匹として見失ったままにはしないということです。この金言がアジェンダに採用される際、そこに人智を超えた神の摂理がはたらいていたのかもしれません。誰かの犠牲のうえに成り立つ偽りの平和を世界は否定したのです。17のSDGsに取り組む世界の善意の人々は、誰一人取り残さない世界の実現に向かって歩み出しているのです。誰一人取り残さないように、目を開いているのです。見つからない羊がいれば、かならず救い出すのです。それが、国連によるSDGsのモットーです。


わたしたちの新しいマーチの主旨も、「誰一人取り残さない」というアピールです。SDGsのモットーが、新しいマーチのスローガンです。新しいマーチは、SDGsに取り組んでいる世界の善意の人たちとつながります。きっと思いは一つです。


誰一人取り残さないように、SDGsに関係する人たちは17のそれぞれのゴールに向かって取組みをすすめます。さて、「誰一人取り残さない」というときの誰一人には「産まれる前の子ども」も含まれるのでしょうか? 17のゴールと169のターゲットをよく読み込んでも、含まれるとも含まれないとも何とも言えません。国連は明確な答えをもっていないかもしれません。その大事な判断は、SDGsに取り組む人々の良心に委ねられるのかもしれません。当然含まれるでしょう!と答える人たちが、新しいマーチの主役です。様々な人たちが国籍を超え、産まれる前の子どもを含めた本当に誰一人取り残さない世界の実現をめざして一致のうちに歩んでいくこと。それが新しいマーチの目指すべき姿です。


「貧困をなくそう」という取組みは、貧しさのゆえに産まれる前の子どもが取り残されるのを見逃してはなりません。「ジェンダー平等を実現しよう」と訴えるなら、女性の性と生殖の権利が産まれる前の子どもを取り残すことで達成されるものであってはなりません。産まれる前から、受精の瞬間から、取り残されてはならない人類の一人が存在します。そのことが念頭になければSDGsは絵空事に終わるでしょう。いちばん小さい誰かのことを、決してわたしたちは取り残しません。そうです。「産まれる前から子どもを守ろう」と声をあげてはじめて、SDGsに込めた世界の深い理想が明白になるのでしょう。


産まれる前から誰一人取り残さない

18番目のゴールが定められることで、SDGsは完全なものとなるでしょう。産まれる前から子どもを守ろう。それが公式にSDGsの最後のゴールに加えられることが新しいマーチの一つのゴールとなるでしょう。




日本は世界でもっとも国連に貢献している国と言われます。その日本から、国連へのさらなる貢献を始めましょう。SDGsが完全なものとなるように、「産まれる前から子どもを守ろう」と訴える新しいマーチを始めましょう。


国連に属する世界各国がそれぞれの社会で、産まれる前から子どもを守るための取組みを前進させられるように、新しいマーチの歩みが様々な仕方で後押しするものとなりましょう。産まれる前から誰一人取り残さない、真に持続可能な世界の実現に向けて、日本から、世界の友たちとともに歩みを開始しましょう。


2020年2月2日 マーチフォーライフ実行委員会 池田正昭




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